利用者さんから言ってもらえた「家族みたいなもん」。介護保険外サービスで、利用者さんの望む形を実現する

できるサービスが制約されていたり、急なニーズに対応することができないなど、介護保険内でのサービスには、さまざまな制約があり、その制度にもどかしさを感じる人も多いと思います。

今回お話を伺った木下珠代さんもその一人。現在、保険外や修学旅行の引率など、困ったときに自分が呼んでもらえるようにとまるで「Uber」のように看護師資格を活かして活動しています。

看取り士の資格もお持ちの木下さんに、保険外のサービスについてや、看取りについて聞きました。

困ったときの最後の砦となりたい

ーーお仕事の一週間のスケジュールを教えてください

日曜日:保険外での訪問看護で、施設の96歳の方のケア
月曜日:午前診察の糖尿病クリニックで看護師のお仕事・ヤングケアラー相談員
火曜日:お休み
水曜日:ヤングケアラーSNS相談の相談員
木曜日:施設の96歳の方のケア・ヤングケアラーSNS相談の相談員
金曜日:施設にシャワー浴のお手伝い・ヤングケアラーSNS相談の相談員
土曜日:施設の方のケア

あとは、小学校や中学校の修学旅行、林間学校がある時は引率で行ったり、来年からは看護多機能施設という訪問もできるし、お預かりもできるし、デイサービスみたいにお昼間だけ通うことも選べるっていう保険内の施設があるんですけど、そこの施設の看護師として働きに行こうかなと思っています。

これ以外に急に「ちょっと受診したいんだけど」とか、何かあったときは休みって言ってるときや、朝と夜の間にお仕事が入ったりします。

――看取りに興味を持ったきっかけは何ですか?

看護学校を卒業してからずっと急性期病院と言われる総合病院に勤めてたんですけど、そこでずっと思ってたことがありました。老衰と言われる状態でご飯が食べられなくなって立てなくなり、体がちゃんと動かなくなって心臓が止まるって自然なことだと思うのですが、意識がもうろうとしてるすごく高齢の方も「食べられなくなったんです」って救急車で病院へ来られるんです。

助ける命ももちろん大事なんだけど、起こる命って絶対あるはずで、起こる命も生まれたら必ず自然に死に向かうしかないし、100%みんなが亡くなるのは間違いないのになぜか延ばそうとしたりする。「これってなんか違うよな」って思って。亡くなる話ってみんなしないじゃないですか。「何で亡くなることがこんなにタブーなんだろう」って思っていました。

誰でも寿命ってあるのに先生たちも「力不足ですみませんでした」って。でも力不足じゃなくて精いっぱいその方が生き切った上での死なのに、病院に勤めていると亡くなるってすごく残念っていうところがあったんですね。

看護学校でも亡くなられた方の処置は習うんですけど、「死」っていう部分での授業って少なくて、そこを大事にしたいと思って、何かないかと探してたら「看取り士」というのを見つけました。看護師でもあるけど看取りという部分に特化したいなと思って看取り士の資格を取りました。

ーー「Uber Nurse」について詳しく教えてください

Uberさんって頼んだらすぐ来るじゃないですか。でも看護師って困ったときにすぐ使えるわけじゃないんですね。

例えば、明日急に受診が必要な方がおられて、ご家族が遠くにいたり、何かの事情で受診できないというときに、明日スグお願いしますって介護保険ではなかなか対応してもらえないこともあるんです。じゃあ、旧だけど必要な時は誰が行くんだと思って。

また、施設で急に退職があったとか、一気に利用者さんが増えて元の看護師の数じゃ足りない、来月から看護師が必要みたいなこともあるんですよ。クリニックでも急に看護師さんがお休みしたときに、人手が足りなくなってしまうこともあります。でもそんな簡単に人手が集まらないし、利用者さんやスタッフも困る。

急な時ほど大変だったり困ったりしているのに、そこに手を差し伸べられる方法が制度ではないっていうのがすごく嫌でした。「困った、誰もいない」っていうときに喜んで動ける看護師でありたくて、私はそれを「Uber Nurse」と名付けました。

困ったときに、「そうだそうだ、誰もいないけど木下さんだったらもしかしたら」って思ってもらえるところにいたいんです。だから、Uberを頼むみたいな感じで私に声をかけてくれればいいなと思って「Uber Nuresです」って言ってます。

保険外だからこそ言ってもらえた「家族みたいなもん」

ーー遠距離介護支援協会に入って良かったこと、印象に残っていることは何ですか?

よく病院で外来の看護師をしてたんですけど、高齢のご夫婦が来られて、がんであるとか、治療どうしますとか、何回も来られるけどよくお分かりじゃなくて、ご家族も遠いところにいらっしゃって、ご家族でもなかなかうまく伝えられずにご家族も困ってる。

困ってる人がたくさんいらっしゃるんだったら、私が一緒に受診して、一緒に話を聞いて、分かりやすくご家族に説明したりできたらなとずっと思ってたんです。

すると、保険内の訪問看護では看護師は受診の付き添いはできないんですけど、神戸さんがされている「わたしの看護師さん」という保険外サービスで受診の付き添いなどができることが分かったんです。これで夢が叶うなと思ったのと、利用者さんの都合が合えば時間に制約がない。保険内だったら1時間なら1時間と決まっているので、もどかしい思いをしていたのが、保険外ならその方が望むように作れるし、望む形を一緒に考えてそれを実現できるなと思って協会に入らせてもらいました。

介護が必要になった方は、ご身内の方が近くにいらっしゃらないことも多くあります。「私一人でもうこのまま死ぬのかな」とか、「私って独りぼっちやしね、子どももいないし」っておっしゃったときに、「大丈夫。一人で逝かすようなことしないよ」って、「もし必要だったら私が夜中ここに泊まってもいいよ、そんな独りぼっちで心配やったらもっともっと付くこともできるし」っていう話ができたんですね。

普通の介護保険内では絶対にできないことだし、身内の方も頻繁に来れるわけでもないっていうところで、「大丈夫、そばにいるよ」って言ってあげれるんです。

施設の方などから「この人だれ?」って聞かれたりするときに、訪問している看護師さんじゃなくて「家族みたいなもん」って言ってくださるんですよ。それくらい近い距離で関わらせてもらえるし、信頼もしてもらえてるって思えるのは、神戸さんがされてるこの事業があってこそかなと思っていて、すごく感謝しています。

看取りは怖くないと知ってもらいたい

ーーこれからやってみたいこと・関心のあることを教えて下さい

介護の制度を知らない方がたくさんいらっしゃって、ケアマネージャーさんがまだ付かないような人たちが今の条件の中で使える制度だったり、保険内・保険外も含めて一番うまく整えられるように相談を受けれたらいいなと思っています。

例えば家を建てるなら「こういう家を建てたい」っていろいろ相談しながら家が建つじゃないですか。そんな形で「自分のお部屋をこんな形にしていきたい」というときに「こういう支援を入れれますよ」とか、「こういうとこと繋げときましょうか」とか、おうちを改造しないといけないんだったら、「環境コーディネーターさんと繋ぎましょうか」とか、つなぐ役割ができたらいいなと思っていて、介護全般の相談を受けれるような形を取りたいなと思っています。

あと、タイなどの海外では、日本より遅れて高齢化社会に入ってきて、今までこういった国はご家族で見るのが主流だったけど、高齢化社会になると日本のように施設もできていくのかなと思っていて、今の海外の状況を知ったり、今ある施設とかも見に行けたらいいなと思ってます。

多機能施設や特別養護老人ホームでも、看取りが怖いという職員さんがたくさんいらっしゃるみたいで、どこでも看取りをできるわけじゃないんですよ。看取りができる施設とできない施設があるので、「そんなに看取るって怖くなんだよ」とか、「生き切った先が死なだけで、死が別物じゃないよ」っていうことを、職員さんが安心して看取りができるように伝えていけたら、形を整えていけたらいいなと思っています。

とてもやさしい雰囲気で話しやすい木下さんですが、利用者さんなど周囲の人のことを第一に考える熱い思いを感じることができました。

利用者さんに合わせてもっと融通が利く、新たな介護サービスの形が実現することを願っています。

みなさんも、自分の経験を活かし、保険外サービスで利用者さんの望む形を実現していきませんか?